2014年7月27日日曜日

フランス語たんの間違いを大人げなく指摘する

Twitter上にはいわゆる「学術たん」と言われるアカウント群がありますが、
その中に「フランス語たん」というアカウントもいらっしゃいます。



多くの学術たんに言えることですが、中の人が勉強中であるため(自分の勉強もかねて運営しているため)か、不正確な記述がしばしば見られます。
不正確な情報を発信しているだけなら、学術たんに限ったことではなく、
私自身も例に漏れないので偉そうなことは言えないのですが、
これを書いている時点(2014年7月現在)で、フォロワーが6000をこえていることを考えると、
その影響力は計り知れないものがあるような気がしないでもありません(正直よくわからない)。

というわけで、「間違いとかあったらご指摘くださいね。」とbioにもあることですし、
大人げなく、間違いを指摘していきたいと思います。
気付いた時かつ、精神的に余裕がある時に更新していきます。
私の指摘自体に誤りがある場合は @fotshu までご連絡下さい。

以下、間違いの指摘


フランス語の /r/ には大きくわけて三つの音声があります。
「巻き舌のR」[r]、「のど鳴りのR」[ʀ]、「パリのR」[ʁ]です。
(このブログでは基本的にこれらすべてをひっくるめた音素として /r/ と表記しています)
いわゆる「パリのR」は、音声学的には「有声口蓋垂摩擦音」と言われるもので、IPAでは [ʁ] で表されます。
これが標準的とされていて、今ではフランス語圏の広範囲で使われていますが、
「パリの」というくらいですからもともとは他の音も使われていました。
地方の人や、母国語で [r] を使う近隣の言語圏の方がフランス語を喋るときには、[r] を使うこともありますし、それで問題なく会話できます。
日本語のハ行で通じるかどうかはまた別の問題ですが、少なくとも巻き舌の方がまだ無難ではあるかと思います。
もちろん、パリのR [ʁ] ができればそれにこしたことはありませんし、
慣れれば、3つの中では一番楽な音だと思います。







hier /jɛr/, aujourd’hui /oʒurdɥi/, leur/leurs /lœr/, d’accord /dakɔr/, bonsoir /bɔ̃swar/, hiver /ivɛr/, avoir /avwar/ で、どれも r を読みます。
しばしば、発音される r を無視した転写が見られます。
たしかにほとんど聞こえないこともあるのですが、聞こえないのと発音しないのは別問題です。
dernier /dɛrnje/ を「デルニエ」、bonjour /bɔ̃ʒur/を「ボンジュール」、au revoir /orvwar/ を「オルヴワール」と転写しているので機械的に省略しているわけではないようです。



mars「3月」は /mars/ で最後の s を読みます。



この文(だけ)なら、おそらく「私はそれも好きです」「アメリカでは英語も話されます」の方が自然。
「アメリカでも」なら Aux Étas-Unis aussi の方が自然。
「私も」なら、moi aussi などをつけるとよい。
これらの例だけで言うなら英語の also よりも too に近いとも言える。


enchaînement /ɑ̃ʃɛnmɑ̃/ は「アンシヌマン」と転写するのが一般的。



上述の printemps /prɛ̃tɑ̃/, や janvier ɑ̃vje/ に加え、français /frɑ̃sɛ/,anglais /ɑ̃ɡlɛ/, septembre /sɛptɑ̄br/, novembre /nɔvɑ̃br/, décembre /desɑ̃br/ などに含まれる /ɑ̃/ を「オン」で転写しているのが見られます。

その転写法自体は採用されている語学書もありますし、実際、日本語話者の耳にもそう聞こえます。
(そう聞こえるから、そう書くというのはまた別の問題があるのですが)
しかし、/ɑ̃/ をすべて「オン」で転写しているわけでもない様子。


Jean /ʒɑ̃/ は「ジャン」と転写されていますが(固有名詞だから?)、これは janvier /ʒɑ̃vje/ の jan と全く同じ発音です。
またこの転写方法だと enchaînement も「オンシェヌモン」になります。文法用語はまた別?


L’Allemagne /lalmaɲ/ で「ラルマーニュ」でしょうか。


これはフランス語としては間違っているわけではありませんが、
pouvoir はいわゆる「状況可能」なので、
「フランス語を話す能力はあるが、なんらかの状況によって、今フランス語を話すことはできない」といったニュアンス。


collège.


-er 動詞の命令形二人称単数は活用語尾の -s がとれて、Excuse-moi ですね。


「頭音が子音」「不定・複数」「非可算」のところだけ、「なし」になっているけれど、
「非可算」の「複数」はすべて「なし」なのでは。
素朴な疑問として「初学者向けではない」とあるけれど、誰向けなんでしょう?